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CAEな日常

一応CAE技術者です。日常の出来事、CAEや趣味の物理、数学などの話題を備忘録として。

超弦理論と観測宇宙

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超弦理論と観測宇宙

もう先月の話になってしまったが、先月の26日に朝日カルチャーセンターにて、「超弦理論と観測宇宙」と題した講座が開かれ、IPMU&Caltechの大栗先生と国立天文台長の林先生のお話を聞いてきた。宇宙について理論と観測を代表するお二人の講演はとても刺激的だった。

ちょうど引越しの前日に、この講座に参加するため新宿へ。早めに到着したので、新宿での買い物と食事を済ませて会場へ入る。会場ではとねさんをはじめ、朝カルの講座ではよくお会いする仲間の皆さんのお顔を拝見する事が出来た。ここで大栗先生の講座を受けてから2年くらいになるが、楽しい物理の話と仲間との交流があって、毎回とても楽しく過ごさせていただいている。

まずは、天文台の林先生から「人類が見た宇宙」と題して人類はどのようにして、宇宙について探求してきたのかという内容を伺った。こうやって、ある程度まとまった観測宇宙の話を聞く機会は滅多になく、本を読んだりして得た知識の整理には非常に役に立ったと思う。それに、あまり観測の面からの話がメインの読書はした事がなかったので、今回初めて出会うようなお話も聞けて良かったと感じた。
最初に天の川はどう見えるかと言う話から始まったが、確かに天の川はぼんやりとしていて雲のように見える。あれが星だとわかるのは、やはり誰かに教えてもらったり、何かから情報を得て知っているからわかるように思う。天の川が星だとわかったのは、ガリレイが初めて望遠鏡で観測した事によるらしい。その後、多くの観測結果や仮説によって銀河系や宇宙の構造などが模索されて来たが、割と理解が進んだのはそれほど昔の事ではないと知り、かなり驚いた。最近まで宇宙についてはほとんどわからなかったのである。特に最近での観測技術は目覚ましく、確かにぼくの学生時代と比べて、宇宙についての観測的データは驚くほど進歩しているのを実感する。

内容は、銀河系のモデルから星団や星雲の発見、セファイドと呼ばれる変光星の発見から宇宙の構造について人類がどの様に宇宙を理解してきたかをわかりやすく解説された。宇宙空間に漂う遠い星の事が、地球にいてわかるというのも非常に不思議な事かもしれない。林先生のお話を聞いて、人類の知性の凄さを改めて考えさせられた気がする。宇宙の構造がどうなっているかなんて、直接見たり体感したり出来ないけれども、光やX線と言った電磁波を捉えてその振る舞いを観る事で単なる想像ではない理論に裏打ちされた宇宙像を構築する事が出来るとは...。

最後は一番興味深いと思われる宇宙論の検証について。宇宙膨張やビッグバンを観測によって検証すると言う最先端のお話である。ぼくが学生時代には、まだビッグバンに関する観測データは半分SFの様な話だったと思うが、最近のマイクロ波背景放射のデータなどはビッグバン後40万年たった宇宙の姿などを確認する事が出来る様になり、現実味を帯びてきた事に驚いている。本当に宇宙の始まりを検証できる様な時代になったのだなあ...。

続いて、大栗先生による「超弦理論と宇宙」。今年はアインシュタインの一般相対性理論が発表されてから100年と言う節目にあたるが、この相対性理論から始まって、宇宙を理解するのには超弦理論が現在最も有力な候補であると言う内容だったと思う。
最初はアインシュタインを中心にした重力に関する歴史的なお話で、ヒルベルトとのデッドヒートや自分の理論を否定して悩んだようなエピソードが興味深かった。エディントンが日食観測でアインシュタインの予言を検証した話は有名だが、この頃の歴史的事情を知ると、第一次世界大戦で疲弊したヨーロッパに光がもたらされた様な事だとわかり、特に印象に残った。敗戦国のドイツの理論を勝利者の英国が実証したと言うのは、敵味方に分かれて戦った国が協力して大きな科学的成果を得たと言う事で、とても心温まる話だと思った。

最近の重力波の観測計画やビッグバンに関する観測結果について解説して、量子力学と超弦理論の世界に入って行く。宇宙はそれを司る重力の理解が不可欠であり、その本質を理解しようと思うと量子力学の世界に入らなければならない。しかし、重力を量子力学と組み合わせようとすると時空間が不安定になり、意味の無い結論が出てしまう。これを解決する最も有力な候補が超弦理論であり、素粒子現象について定量的な予言を導く事を目指していると言う。その超弦理論の詳しい説明についてはやはり時間の関係もあり、結構割愛されたのは残念。まあ、あまり深入りしても難して混乱するだけの様な気もするが...。

最後は時間が押して駆け足になってしまったが、アインシュタインが指摘した量子もつれが非常に印象に残った。今後はこれが量子重力の謎を解くカギになっていくだろうと感じた。
アインシュタインは量子力学を良く理解できなかったと言う話を聞いた事があり、そういうイメージを持っていたが、この講座でそれは全くの間違いだとわかった。
「私は量子の問題については、一般相対論についての100倍考えてきた」
と言うアインシュタインの言葉が象徴的である。100年も前に量子もつれを指摘したのだから...。

お二人の講義の後は、休憩を挟んで対談となる。超弦理論より観測宇宙の話がメインになった様だが、立場の異なるお二人により、いろいろな面から今物理学者が考えている宇宙について、非常にホットな話題を聞けたと思う。
ぼくもビッグバンとインフレーションについて一つ質問した。いつも、インフレーションとビッグバンがセットで語られるが、その関係が今ひとつはっきりしなかった。今回の回答で、ビッグバンの定義の仕方による事がわかった。米国では、インフレーションは仮説でそれが終わった後の状態がビッグバンだと定義されている。日本では宇宙の始まりをインフレーションを含めてビッグバンと言うらしく、ぼくもそういう認識だった。現在では日本でも米国の定義でビッグバンを議論する様になってきたと言う話である。
引越し前の慌ただしい1日だったが、とても充実した内容で良かったと思う。

講座の後は、朝カルの仲間と近くの「ライオン安具楽」で恒例のオフ会。楽しく飲んで食べて、交流が出来て良かった。

セミナー後の一杯は至福の時。

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N. Yokoyama
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非公開
自己紹介:
2011年に再就職するも8月には退職し、また出直そうと10月から新しい職場に就職。現在は派遣技術社員として、機械系CAEの業務に従事しています。
とりあえず、ブログはぼちぼちやっていくつもりです。
以前のブログは
http://ameblo.jp/huitre-va/
(2010年12月終了)
(2013年非日常の出来事として再開)

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