昨日は新宿の朝日カルチャーセミナーで、大栗先生による「素数の話、解の公式の話」と言う講座を受けて来た。先生の講座は、2年前から受講していて今回は3回目だろうか。いつも最先端の研究について、分かりやすくお話をしてくれる。
大栗先生はCaltecとIPMUのKavli冠教授で、先頃Caltechのウォルター・バーク理論物理学研究所の初代所長に就任された。今回は理論物理学のお話ではなく、幻冬舎のWebマガジンに連載された内容で、数学のお話である。
今回は開始が10:00と早い時間なので、7:00に群馬を出発してバスで新宿へ。7F会場を4Fと間違えて少し焦ったが、無事に会場に到着。午前と午後の2部に分かれ、午前は素数の話、午後は方程式の解の公式の話と言う内容で進められた。
午前中の素数の話は素数とは何かから始まり、現在素数を利用したものとして公開鍵の暗号とはどのような物かと言う所までお話をされた。今回の内容で、改めて素数の面白さ、奥の深さを実感出来た様に思う。高校時代は、素数などの整数論はあまり好きな分野ではなかったが、最近もう一度物理や数学に興味を持ち出して勉強し始めると、受験と言う環境とはまた違った面白さがわかり、数論と言うのも非常に興味深いものだと思う様になった。考えてみれば、学校の勉強ではカリキュラムがあり、最低ある程度の分野を網羅しなければいけないため、ひとつのテーマについてじっくり時間をかけて取り組む様な余裕はない。
また、インターネットでの暗号と言った身近な利用例まで授業できちんと説明される事がないのでそこに到達する過程だけで精一杯の状況、力尽きてしまう。まあでも、こういうやり方は学校を出てからしか出来ないのだろうなとも感じていて、ある程度仕方のない事だとは思うが...。
整数を素因数に分解して性質を調べるのは、物質を素粒子に分解して調べるのと同様、欧米で発達した要素還元法であると言うのが印象に残った。多分、自分は今までそんな風に素数を捉えた事はなかったのではないか。そう考える事で、ある分野が別の分野につながって行く事が実感出来、また新しい数学の見方を学んだと思えた。
素数と対数の関係、大きな数に対する対数表示での見方は非常にわかりやすく、今まで中でもやもやしていた霧が晴れて行くのを感じた。
昼食休憩を挟んで午後の部。昼食は、同じ朝カルで知り合った「とね日記」を書いておられるとねさんらと近くの和食の店で海鮮丼。また、お話し出来て良かった。
午後からは方程式の解の公式についてのお話。方程式の歴史から始まり、因数分解の話となって、ここでまた素数のお話が出た。素数とリーマンのゼータ関数の話であるが、以前からそれは関係があると言う事を聞いており、どういう事なのかなあと興味があった。
先生はオイラーの発見を示して、ゼータ関数が素数を用いた積の形で書き表せると説明され、まだ未解決のリーマン予想につながると言う所まで触れられた。オイラーは沢山の業績を残しているが本当にすごいと感じた内容だった。
そして、本題の解の公式の話。2次方程式から始まり、3次、4次の解の公式はどのようにして求まるのか、なぜ解けるのかの解説をして頂いた。特に2次方程式に時間をかけて、学校で学んだ2次方程式とはまた違った考え方を学ぶ事が出来た。その拡張でわかりやすかったのは3次方程式の解法、あみだくじの例から群の話に進み、解の方式の導出について確認する事が出来た。4次方程式は少し省略して概略のみだったので、詳細を時間を作って自分でフォローしてみよう。
最後に5次方程式がなぜ解けないか。つまり加減乗除と冪根では表現出来ない理由を説明された。
今回の講座で、冪根と巡回群の対称性が解の公式を構成出来ない原因になっている事が良くわかったと思う。5次方程式は20面体群という単純群が出て来て、巡回群に分解出来ないために冪根で解けないのであった。ここで、単純群の対称性を扱える手法によれば解の公式を構成出来ると言う事を聞いて、非常に印象に残った。
楕円関数や超幾何関数を使う事で5次方程式の一般解を求める事が出来るとは...。
今回も内容豊富で充実した時間を過ごす事が出来た。