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CAEな日常

一応CAE技術者です。日常の出来事、CAEや趣味の物理、数学などの話題を備忘録として。

宙に訊ね理を導く

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宙に訊ね理を導く

今日の午後は、JR柏駅近くのアミュゼ柏で、Kavli IPMUと東京大学宇宙線研究所の合同一般講演会があり、興味深いお話を聴くことができた。

この一般講演会は、先月IPMUのイベントお知らせメーリングリストで案内が来たもので、「宙に訊ね理を導く」と題して、最高エネルギー宇宙線とカラビヤウ多様体の二つのテーマでの内容だった。予約の申込では抽選で参加の可否が決まるということだったが、無事に当選のメールが先月末に送られて来て今回の講演会を楽しみにしていた。

こうしたイベントは、大抵東京が会場なのだが、IPMUが柏にあることもあってか、自分にとってはアクセスの良い場所で非常にありがたかった。特急ではないので少し時間がかかるが、東京に出るよりは楽である。常磐線で常陸多賀駅から柏駅へ。駅から少し迷ったが、無事に会場にたどり着くことができた。水戸でというのはちょっと難しいのかもしれないが、IPMU関係の講演会があるなら、今後もこのアミュゼ柏であると良いなと思った。

さて、まずは次回の開会宣言から始まり、宇宙ニュートリノ観測情報センターの奥村センター長の挨拶があった。予定では所長の梶田先生だったようだが、所用で来られなくなり、代わりに奥村先生になったということらしい。今日の講演を行うお二人の紹介をされた。

まずは、東大宇宙線研究所の佐川宏行先生。「最高エネルギー宇宙線」と題して、ユタ州でのテレスコープアレイによる宇宙線の観測と観測からわかる宇宙線の特徴を話された。まず、宇宙線の導入として、スパークチェンバーでの宇宙線の検出のスライドを見せられたが、学生時代によく紹介されていたのを思い出した。僕は物理学科だったが、実験はその頃興味がなかったので、特に何か感じるものがあったわけではなかったが、こうして改めて実験物理の装置などの話を聴くと、自分が経験してなかったこともあり、非常に新鮮に感じる。今だったら、実験や観測にも興味を持って取り組めていたかもしれないが、学生時代はもったいないことをしたなと少し後悔している。ユタ州での装置の設置や運用の様子は、大変そうでもあり楽しそうでもあり、学生時代にこんな体験も良かったのになあと昔を思い出しながら聴いていた。

宇宙線のエネルギーを表すのには、電子ボルト(eV)という単位を用いるが、可視光のエネルギーが2eVくらいなのに対し、宇宙線は10^15〜10^20という非常に高いエネルギーを扱うことを話され、その大きさの違いを強調された。銀河系外が起源の宇宙線は非常にエネルギーが高く、加速器で生成可能なエネルギーの100万倍という。こうした非常に高いエネルギーの宇宙線、最高エネルギー宇宙線がどこから来るのか、その生成機構はどういうものなのかという問題が興味深い。
最高エネルギー宇宙線の源とされているのは、現在では活動的な天体として
- 活動的銀河核
- 衝突銀河
- マグネター
- γ線バースト
といったところらしい。また未知の現象として
- 超重粒子の崩壊
について、非常に興味深い研究対象としているとのことだった。

宇宙線は、大気蛍光望遠鏡と地上のシンチレーター検出器で捕える。空気シャワーの観測の話は学生時代にも聴いたことはあったが、データや図を交えてのお話は非常に刺激的でわかりやすく、当時漠然と覚えていただけの知識がより確実なものに変わったように感じた。
エネルギーの高い領域で、頻度がぐっと下がる傾向がみられるが、これは宇宙マイクロ波背景放射が原因だろうと説明され、GZKカットオフといった話も出たが、これはこれから調べてみたい。最高エネルギー宇宙線はそのエネルギーの高さから、あまり磁場に妨害されずに進んで来るため、だいたい源となる天体の位置から来るらしい。現在、別のチームとの共同研究も含めて、宇宙のどこから来ているのかを特定するための分布図を作っているとスライドで示して頂いた。超銀河面と呼ばれるものの近くに集まっているのが特徴的だとのことだ。
他にも粒子の同定方法など興味深いお話が聴けて非常に良かったと思う。面白かった。

休憩を挟んで、Kavli IPMUの戸田幸伸先生。こちらは「カラビヤウ多様体」と題して、数学と物理学の関係や現代までどのような経緯があったかなどについて話された。しかし、こちらはかなり内容が高度なので、思った通り突っ込んだ話、内容を掘り下げた話はできなかった。数学の一般講演というのはあまり聴いたことがないが、中学の時、数学科の大学教授が講演をされたことがあり、話が全くわからなかったことを覚えている。
カラビヤウ多様体は、超弦理論と深い関係があり、理論物理学者が興味を持っている数学の問題だと思う。しかし、純粋に数学者がどういった興味で研究をされているのか聴いてみたかった。ただ、やはり具体的な詳しいお話はなかなか無理のようで、表面的な概念を一通りサーベイする形でしか話されなかったのは、仕方がないと感じつつも少し残念だった。とはいえ、専門的な数学用語や定義を並べられても、一般の参加者には理解できないだろうし...。カラビヤウ多様体で面白いのは、ミラー対称性の重要性と最近の導来圏などの圏論での扱いなのではないだろうか。この辺の話は詳細に語るのは専門的な知識が必要になってしまうので、そういうものがあるという紹介にとどまった。ミラー対称性については、幾何学の難しい問題を、微分方程式で解けるといった話をされていて、一方での球面の数を予想するのに、他方の微分方程式の解を使うと、球面の数を数え上げることができ、予想が証明されたという内容だった。超弦理論のホログラフィック理論でも量子力学の重力のない難しい問題が、重力を含む世界での計算によって求めることができるという内容も聴いたことがあるので、それと同じようなことなのかなと感じた。
今日の講演ではミラー対称性と楕円曲面の話が興味深かったので、これらについて理解を深めてみたいと思う。複素多様体については、学生の頃から興味を持っていたが、結局真面目に勉強することもなく歳をとってしまったので、今からまた勉強し直してみたい。

最後は、戸田先生から佐川先生への質問と佐川先生から戸田先生への質問、参加者の皆さんの先生方への質問を交えながら対談が行われた。ここでのやり取りは、お二人がしばしば話が噛み合っていないように思われる状況があり、それがなぜかおかしかった。実験物理学者と数学者というのはこんなにも考えていることが違うのだなということも実感できて、とても楽しい対談だった。
戸田先生の講演では、「悪い振る舞いをする球面」とか「良い振る舞いをする計量」という言葉が出て来て、質問ボードに悪いとか良いとかの意味を質問した。同じことを考えていた人もかなりいて、やはり気になった人が多かったようだ。結局、回答についてはさっぱり理解できなかったわけだが...。まあ、この辺は自分で勉強してみよう。

今回も非常に貴重なお話が聴けて良かった。休日にこうした講演会に参加することは、知的好奇心を維持することと、業務に流される日常では経験できない刺激を受けるという意味で、自分にとってはとても大事なことになっている。今後もこうした機会に積極的に参加して、刺激を受けたいと思う。
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N. Yokoyama
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非公開
自己紹介:
2011年に再就職するも8月には退職し、また出直そうと10月から新しい職場に就職。現在は派遣技術社員として、機械系CAEの業務に従事しています。
とりあえず、ブログはぼちぼちやっていくつもりです。
以前のブログは
http://ameblo.jp/huitre-va/
(2010年12月終了)
(2013年非日常の出来事として再開)

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